イリヤスフィールの日記帳
タイトル |
イリヤスフィールの日記帳 |
表紙 |
橘 有斗 様
|
頒布日 |
2007/08/19(コミックマーケット72) |
頁数 |
40P |
イベント価格 |
500円 |
自家通販 |
無し(400円) |
委託 |
メロンブックス DL(216円) |
outline
イリヤが、日記帳を読みながら、倫敦で皆と過ごした日々を回想する形の本となります。
桜、凛、ルヴィア、士郎が登場します。
sample
目を閉じる。それだけで、私の意識は昔の光景に飛び込んでいった。懐かしい……とても懐かしい記憶が、目蓋の裏に浮かんだ。あれは、確か倫敦の春の出来事だった。
――そうだった。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの身は、その時、英国にあった。英国の首都、倫敦。オリンピック開催も決まり、急ピッチで大小様々な開発が行われる活気ある都市に、私達は住んでいた。
「……そうかしら?」
堅い私の声に、サクラはベンチに座ってから初めて私の方を見た。きょとんとしたその顔は、何だか可愛らしい。そうだ、ここで言ってしまおう。唐突に、そんな事を思いついた。だって、サクラが言ってくれたんだから――私も、きちんと話さなきゃいけない。
観光で楽しんだ帰りに相応しい内容とは思えないけど、それでも勢いに任せないと、これから先も言えなくなりそうだから。
「サクラ、教えてあげる。マトウシンジを殺したのって、私なの」
特に何の気負いもない私の言葉に、サクラは一瞬だけ目を見開いた。そして、彼女の反応はそれだけだった。泣きも喚きもせず、ただ呆然としている。でも、驚愕というほどではない事は判った。それで、私は理解した。
「……やっぱり、知ってたんだ」
サクラは、壊れたブリキ人形みたいに妙な動きで頷いた。
「……どうして、今更……そんな事、教えてくれるんですか? それも、こんな時に。イリヤさんは私がマスターだった事を知っていても不思議じゃないけど、それでも今まで何にも言わなかったのに。だから、私だって何も言わなかったのに……どうして、ですか?」
「どうして、か……どうしてかしらね」
理由を色々というのは簡単だ。でも、一番の理由は……単純なものだ。
「私がサクラを好きだから、かな」