reminiscences ~ 思い出話 ~
タイトル |
reminiscences ~ 思い出話 ~ |
表紙 |
アサノ ナツロウ 様
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頒布日 |
2008/12/30(コミックマーケット75) |
頁数 |
36P |
イベント価格 |
500円 |
自家通販 |
無し(400円) |
委託 |
メロンブックス DL(216円) |
outline
年も押し迫った師走のある日、セイバー、凛、桜がそれぞれの家で大掃除をして、過去に思いを馳せる内容になります。
UBW後の設定となってます。
sample
「そうですか」
シロウの言葉に納得し、私はハンカチを取り出した。そして、シロウの傍によって、彼の少しだけ汗の滲んでいる額を拭いてやる。
「ちょ、セイバー?」
「少し、汚れてますから……あ、顔を背けないでください」
少し慌てるシロウの顎を押さえて、ハンカチを動かす。軽く、撫でるように。ついでに、頬に付いていた黒い汚れも拭き取ってやる。
「……はい。これで綺麗になりました」
「……ああ、ありがと」
シロウは照れているのか、少しぶっきらぼうに礼を言う。いい気味だと思う。普段の稽古の時、彼がこちらにしている事へのお返しだ。苦笑しつつ、私は部屋を見渡した。
「しかし……随分とすっきりしましたね。掃除する前とは、同じ部屋だと思えない」
私が言うと、シロウは微かに笑う。
物置代わりになっていてガラクタだらけで足の踏み場もなかった部屋は、二人がかりで掃除したお陰で大分片付いた。色々と物を動かしたせいで、大量の埃が宙へ舞っていて、それが少しばかり不快だが見た目は大分すっきりした。少し家具を配置すれば、そのまま客間にでもできそうだ。埃も、窓を開けて風を取り込めば、すぐに収まってくれるだろう。
思わず人心地ついてしまいそうになるが、まだまだ掃除する部屋はいくつもある。
「さて……では、次の部屋に取りかかりますか」
「そうだな。ゴミの処分とかはまだ残っているけど、それは業者にでも取りに来て貰わないとどうしようもないし。とっとと今日の分は終わらせちまおうか。」
私とシロウは、気分も新たに次の掃除場所に向かおうと出口に足を向けた。
「……ん?」
「どうしました?」
出口に向かう途中、シロウが何かに気付いたような声を上げる。見逃していた汚れでも見つけたのかと思ったが、私の予想に反してシロウはしゃがみ込んだ。そして、足下に転がっていた何かを拾った。
「……これは……」
部屋は薄暗かったので、最初はそれが一瞬何なのか分からなかった。しかし、シロウが拾った物を掲げると、私はそれに見覚えがある事に気付いた。
「あ、それって……」
「ああ、覚えてたか。昔、セイバーの使っていた竹刀だな。そう言えば、ここにしまってたんだったな」